BMWのポリシーを体現した
不朽で不遇の名機
今回ご紹介するK100RSは、今から25年も前の1983年にネイキッドタイプのK100と共に発売となりました。発売当初の車両価格は217万円。まだ消費税は無く、自賠責保険は2年間で6万円台の時代です。その翌年179万円に下げられ、87年には154万円、3%消費税の導入に合わせた89年には141万円、90年には148万円で最終を迎えて、K100RS4バルブへと移行していきました。途中の88年には市販車初となるABSが装備されて180万円という価格でした。それまで生産されていたOHV系モデルとは全てが異なっていたため、革新的なメカニズムに惹かれるBMWオーナーから国産ハイパワーモデルのオーナーまで幅広く支持されていました。現在このモデルの中古を探すのは容易ではありません。経過年数に加え、カウルの状態、車両の人気度から店頭に中古車が並ぶのは極々稀です。年式にはほとんど関係なく程度・状態によって価格が上下します。ほとんどの場合は10万円台の現状販売から、程度が良くABS付のモデルで50万円以下がほとんどのようです。モーターサイクルとしては良い車輌なのですが、お客様に選ばれなければその良さも見出されないという不遇なモデルです。
特徴
満たされた機能と十分な性能
BMWイズムを後世に伝える
K100RSのスタイルは、4バルブになっても1100になっても変わることがありませんでした。実に14年間も変わることの無かった(変える必要の無かった)スタイルは、「新しい」とか「古い」という尺度では測れない「独創的で機能的」という言葉がぴったりです。ツアラー志向の高いアッパーカウルには、ウインカーを内蔵したミラーを装備しており、手に当たる走行風を効果的に防いでくれます。また、カウル上部に装着されたフラップの角度を調整することによって、通常姿勢でもヘルメットにあたる風圧を軽減することが可能。エンジンはBMWモーターサイクル初となる水冷DOHC4気筒エンジン+インジェクションを採用しています。驚くほどアクセルに敏感な現代のエンジンとは異なり、必要な分だけしっとりとしたトルクが発揮されるタイプです。1000ccで90馬力に抑えられたエンジンは、ツアラーとしての性格に合った仕様で、ノーメンテナンスでも驚くほどの耐久性も備えています。リアタイヤへ動力を伝えるドライブシャフトは、パラレバータイプではなく、トルクのON-OFFによって車体が多少上下する一般的な方式です。そのほかの特徴的な部分として、アルミニウム製ガソリンタンクの採用、左右分離式のウィンカースイッチ、片持ち式スイングアーム、ステンレス製エキゾースト、88年モデルからは市販車初のABS装備等々、今のBMWの元となる装備が満載のモデルでした。
オーナーの声
いま見ても飽きないデザインと
ツアラーとしての素質に満足しています
このK100RSは1988年に中古で購入しました。最初のバイクは19歳のときに安く譲ってもらったスズキのGSX400Eで、その後BMWに乗るようになっていま44歳ですから、もう20年になりますね。このバイクを選んだのは、やはりツーリングに行きたかったからです。当時はパニアケースを装着したバイク自体珍しくて、K100RSは試乗もせずに購入を決めてしまったほどです。あのエンジンレイアウトや、いま見ても古臭さを感じさせない、まとまりのあるレーシーなルックス、それでいて当たり前のようにツーリングに行ける。そんなバイク他にありませんよね。BMWというメーカー、ブランドに魅力を感じていたというのもあります。それでつい先日、車検を受けたときに外装を再塗装してもらいました。乗り換えも考えましたが、なんだかもったいないし、最新モデルよりも動きが鈍いことはわかっていますが、まだ飽きないんですよね。お気に入りです。
学生のころはよく自転車でキャンプをしながら旅をしていました。東北や北海道へもよく行っていて、もともとそういう旅が好きなんですよ。いまでもバイクや自転車に乗っていますが、家族もあって、昔みたいに泊まりでツーリングなんて行けなくなってしまいました。今後は日帰りでもいいから、よく走っていた伊豆方面へ走りに行きたいですね。
中古車選びの注意点
要注意箇所はほぼお決まり
知っていれば問題にならず
サイドスタンドは地面に接地していないと自動的に戻る構造になっていて、地面から離れた瞬間に戻ってしまいます。また、サイドスタンド根元の「コの字」部分は、度重なる酷使(車体に全体重をかけたり、サイドスタンドのままハンドルを切ったり)で開いていき、隙間が徐々に広がり、サイドスタンドがサイレンサーに激しく干渉したり、最悪の場合には折れたりすることもあります。サイドスタンドを出して、接地させない状態で上下に動かしてみてください。あまりに動きが大きい場合には、取り扱いに十分気をつけると共に、折れてしまわないように優しく操作しましょう。もちろん交換がお勧めなのは言うまでもありません。
K100RSはインジェクション方式を採用しています。燃料をガソリンタンクからホースを通してインジェクターと呼ばれるノズルへ圧力を加えて押し出しています。ここで重要なことは、その途中にある燃料ホースが劣化していないかどうか、ということです。外観から確認できるホースはごく一部しかありません。見えない部分から燃料が漏れていたらとても危険です。簡単にホースがひび割れたり、ホースバンド近くが切れたりすることは少ないでしょうが、4年毎に専用ホースに交換することが正しい選択です。この作業は必ず知識のある販売店で実施することが大切です。万一漏れ出したら車輌火災につながりかねない、最重要箇所です。
購入の際の注意点
1.クラッチハウジング下の穴からオイルが垂れるほど漏れていたら要注意です。
2.ブレーキフリュードのリザーブタンクが経年変化で曇っていたら要交換です。
3.スクリーン上のスポイラーにガタが多いときは固定用のつめが折れている可能性があります。
4.サイレンサーカバー取付け用のナットの溶接は剥がれやすいので、軽くたたいて要確認。
5.走行距離が多い場合には前後ブレーキディスクが磨耗していないかどうか要確認。
6.ミラーボディとカウルとの接合金具に不具合があると、ガタが出たり、外れやすいので要注意。
7.年数の経つモデルなので各カプラー内の接続ピンの腐食(特にコンピューター)に注意。
8.純正ガソリン計は取り付け可能モデルとそうではない初期型モデルがあるので要注意。
9.エンジン前側下部のウォーターポンプからのオイル又は冷却水の漏れは必ず発生します。
10.長期間放置された車輌は燃料ポンプが故障したり、ゴム部品がドロドロに溶けてしまうことがあります。